毎年新年を迎えると、新人研修の準備で胃が痛くなる、教育担当のSTすこみみです。
4月の入職が近づいてくると(よく入社という人がいますが、会社ではないので「入職」が正解です)、楽しみな反面、不安もむくむく湧いてきますよね。
専門的なことからコミュニケーションまで、考えだしたら心配なことだらけだと思います。
そこでこの記事では、新人医療従事者のあなたが、今勉強しておくと4月にとても得をすること、上司や先輩に感心される8つのスキルを、新人教育担当の私がお教えします。
ここに出てくることは、今まであなたがそこまで意識してこなかったことかもしれませんが、職場では必ず求められることです。
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新人理学療法士に最も必要な勉強は専門分野ではない!
専門職になるあなたには、技術的な不安も多いと思います。私ももちろん新人としてはじめて仕事をするときにはおなじ思いを持っていました。
でも、職場全体の教育を統括する立場となった今、経営トップや上司の意見も含めて断言できますが、あなたが1年目、とくに4月の時点で求められているのは、一人前の医療技術や知識ではありません。
あなたに何より求められていることは、
- 社会人としての意識を持つこと
- あいさつ、身だしなみ、話し方などのマナーを身につけること
- 「組織人」としての仕事や業務の進め方を身につけること
- 読む相手に配慮した、適切な文書を作れるようになること
- 「報連相」を基本とする、仕事で必要なコミュニケーションを身につけること
- 「相手に伝わる」話し方を身につけること
- 社会人としての考える力(論理的思考力)を身につけること
- タイピング、ワード・エクセル・パワーポイント等PCスキルを身につけること
などの、一般企業に就職する人たちと同じことです。
4月に完璧である必要はありませんが、職場においては、職能が秀でているだけでは一人前の医療従事者としては認められないことを受け入れて、しっかり勉強していきましょう。
新人理学療法士が得する8大スキルを勉強しよう!
8つのスキルを見てわかるように、新人の理学療法士をはじめとするリハビリ専門職にとってまず必要なのは、社会人としての常識的な意識や行動、そして基礎的なビジネススキルです。
1.社会人としての意識
どんな職場に努めたとしても、最初に必ず言われるのが「もう学生ではない。社会人としての意識をもって」ということ。
貢献の対価としてお金をもらうようになる
学生と社会人の違いは、ひと言でいえばこういうことです。
- 学生・・・自分の目的のために学校に入学し、お金を払って教育を受ける
- 社会人・・期待される役割を果たして貢献し、その対価としてお金をもらう
社会人としてのあなたには、自分の専門性を高めたい、研究をがんばりたいなどの「~したい!」という自分の思いだけで過ごしてはいけない立場になるということをわかってほしいです。
「個人」から「組織の顔」になる
あなたも「バイトテロ」という言葉を聞いたことがありますよね。
外食チェーン店のアルバイトが、「くびかくご」などと悪ふざけして不適切な動画をSNSに投稿し、結果本人のアカウントが炎上するだけでなく、バイト先に多大な影響を与えている一連の騒ぎです。
投稿をした本人は、自分が首になるかの瀬戸際で面白いことをしているだけのつもりだったのでしょうが、バイト先の企業が上場企業であれば、株価にまで影響しかねません。
これは当然、正社員・正職員でもいえること…というよりも、正職員であればもっともっと大きな影響を職場(組織)に及ぼします。
あなたの言動はこれからは「組織の言動」として認識されるようになります。つまりあなたはもう「組織の顔」なんです。
法を守るのは当然のこと、職場の規則、そして倫理を犯さないように、責任ある行動をとらなければならないことを意識しましょう。
2.あいさつ、身だしなみ、話し方などのマナー
社会人となったあなたには、相応のふるまいが求められるようになります。
たとえどんなに相手を敬っていても、それを形に表すことができなければ、不十分なのです。
例えば入ってすぐの新人研修で、机の上が散らかったまま、あるいは椅子を引いたまま席を離れたり、胸から上はきちんとしていても、足元を見ると靴を脱いでいたり…こんなマナーやふるまいでは、社会人として未熟だと思われます。
ほかにも、ビジネスマナーといわれるものを知っておく必要がありますが、あなたは次のことに、どれだけ正しく対応できますか?
- 尊敬語と謙譲語の使い分けはできますか?
- 複数の人がいる場で、あなたはいつあいさつすべきか、知っていますか?
- 会議室であなたはどこに座ればいいか、わかりますか?
- 名刺はどのようにお渡しすればいいかわかりますか?
- 入室時のノックの回数はいくつか知っていますか?
- 外部の方に自分の上司の話をする時、どう呼べばよいですか?
これらはビジネスマナーのほんの、ほんの一部です。
こうしたことにひとつでも知らないことがあるならば、今すぐ調べておきましょう。
あいさつやマナーは一朝一夕では身につきません。知ったうえで何度も実践し、はじめて自分のものになるのです。
まずは一冊、社会人の常識やマナーの本を手元に置いておきましょう。絶対に得をする日が来ます。
3.「組織人」としての仕事や業務の進め方
仕事…というと、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のあなたは、患者に対するリハビリや医療に関するもののことだと思うかもしれませんが、そうではありません。
ここでいう仕事とは、リハビリそのものだけでなく、物品や予算の管理から先輩上司に命じられるちょっとした仕事までも含む、すべてのものです。
リハビリ以外を雑用と思うなかれ!
実際によく耳にするのは「私たちは医療従事者なのだから、その仕事に専念させてほしい。事務処理は事務の人にやってほしい」という訴え。
もちろん効率化を図るために分業することもありますが、自分がやりたいことだけやってればいいというものではないということをしっかり認識しましょう。
仕事への取り組み方を知っておこう
臨床に出たあなたには、研究をしたいとか最先端のリハを取り入れていきたいとか、そういった夢・野望があるでしょう。
でも今のあなたがしなければいけないのは
- まずは言われたとおりに、謙虚な姿勢で基本の仕事をマスターする
ということです。
いずれは突き抜けたことができるようになるかもしれませんが、今はまず、最低限の水準の仕事ができるよう、先輩や上司の指導に耳を傾け、基本に忠実に仕事をしましょう。
さらに
- PDCAサイクルで仕事を回す(臨床も同じです!)
- 時間を有効活用する。他人の時間を無駄に奪わない
- 優先順位を考えて仕事をする
- すぐできる仕事は明日に先延ばししない
- コスト意識を持って仕事をする
- 仕事は「がんばった」では評価されないことを理解し、成果を意識する
といった、仕事をする上での基本の進め方を意識しておきましょう。
新人がする仕事の質は、どんなにがんばっても素晴らしいものにはなりません。
それよりもしてほしいのは、期限を守ること。良い仕事をしようとして時間がオーバーするくらいなら、拙くても良いので早く完成させ、チェックしてもらうようにしましょう。
最初はそんな感じに進めればいいんです。
新人の仕事の進め方についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
4.読む相手に配慮した、適切な文書を作る力
リハ実施計画書やサマリー、報告書、メール、議事録など、これからはさまざまな文書を作成する必要が出てきます。
文書に残す目的は「事実を正確に記録し、相手に確実に伝える」ということ。特に重要なことは、口頭で伝えて言い違いや聞き間違いが生じるおそれがあるため、文書として残しておく必要があります。
仕事における文書で最も気をつけなければいけないのは「読む相手に配慮した、適切な文書を作る」こと、すなわち「相手に伝わりやすい文書を書く」ということです。
- 一読しただけで理解できる、シンプルな文書にする
- 手書き文書は読みやすさに注意し、誤読によるエラーが起きないよう注意する
- 整理・保存がしやすいように、できるだけA41枚に収めるようにする
- 原則ひとつの文書やメールで伝える用件は1件にとどめる
- 結論や要点を最初に述べ、理由はそのあとに。余分な修飾語は省く
- 句読点の位置や段落のつけ方に気をつける
- 接続詞は適切な場所で適切に選んで使用する
- 5W3Hを意識する
- 仕事の文書では主語は省略せず、述語にできるだけ近づける
- 提出期限に間に合わせることを最重要とする
文書を読む相手に時間を使わせている、という意識を持ち、常に文章(文書)作成能力を磨き続けましょう。
仕事の文書では5W3Hをきちんと記しましょう。
What?(内容・行動)、When?(時期・スケジュール)、Where?(場所・地域)、Who?(実行者・対象者)、Why?(理由・目的)、How?(方法・手段)、How many?(数量)、How much?(費用・金額)
そしてもちろん、添削してもらったときは、素直に受け入れるように心がけてください。
5.「報連相」を基本とする、仕事で必要なコミュニケーション力
「報告・連絡・相談」(略して「報連相」「ホウレンソウ」)は、仕事を円滑に進めるために欠かせないコミュニケーション。
あなたも実習時に指導を受けたと思います。ここでは、報連相について、特に気をつけたいポイントを押さえておきましょう。
報告と相談は「早め早め」を意識する
「報告」「相談」はこまめに、早めにする方がいい、とわかってはいるけれど「どの時点で行うべきか」が難しくて判断できない、と悩んでしまいませんか?
とくに経験の少ない今のあなたは、いろいろ考えるよりも「早め早め」を心がけて。
相手によっては「また?」とうっとうしそうな顔をするかもしれませんが、そんな人だって、結局あなたが失敗するようなことがあれば「なんでもっと早くいってくれなかったの?」というに違いありません。
勝手な判断をしてもっと大きな迷惑をかけるくらいなら、うっとうしがられる方がまだましです。
報告メモのポイントは
- メモで報告した理由を述べること(「お忙しそうでしたので…)
- 要件は簡潔に箇条書きで記載
- メモを残した日時は必ず
- 所属と自分の名前、内線番号を忘れずに!
連絡は「関係する人全員に」がポイント
一方「連絡」をするときは、その仕事に「関係する人全員に伝える」ことを意識してください。
特に新人のうちは、仕事の全容が見えにくいもの。
あなたが「あの人は関係ない」と思っていても、実際には関与している場合も多いので、慣れるまでは範囲は広めに考えた方が無難です。
体調不良時は出勤前に必ず連絡を!
まだまだ一般企業では「具合悪くても出てこい」なんていうブラックなところもあるかもしれませんが、あなたが勤めるのは病院や施設など、感染管理の厳しい職場です。
勝手な判断をせず、職場のルールに従ってください。
ルールがはっきりしない場合も「これくらいなら…」とか「休むと迷惑がかかる」と自己判断しないで、先に!絶対に!上司に連絡してください。
体調不良時の連絡のしかた、いうべきセリフはこの記事を読めばバッチリ!実習用ですが基本は同じです。
6.「相手に伝わる」話し方
ただでさえ緊張する新人時代、相手にうまく伝えられるように話せなくて自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。
これはプレゼンテーション力にかかわってくることで、上手になるのには練習も経験も必要になります。
これからあなたが意識していかなければいけないのは
- 「伝えるべき内容」を整理する・・・5W3Hで考える
- 「伝える手段」を選択する・・・資料を作るのか、口頭のみか、など
- 「伝える技術」を身につける・・・姿勢・態度・表情・声・スピード・間など
これらはどれも本当に大切で、特に私は「伝える技術」には気をつけています。
7.社会人としての考える力(論理的思考力)
社会人になれば、論理的に物事を考える力が求められます。
どんな仕事や研究をするにしても、論理的に問題解決の方法を考えたり、筋道を立てて話したりできなければ、成果に結びつかないし、説得力を持たないからです。
論理的思考力をつけるのに必要なのが数字で考えるという習慣です。
数字で考える人は常に数値目標を設定し、その結果にこだわります。
「いつまで(期限)に」「どれだけ(量)の」「どの程度(質)の」仕事をすればよいのか、ゴールを明確に定め、そこを目指して努力することは、個人のリハビリにおいても、部署の目標管理においても重要です。
こうした考え方をしていれば、目標達成できなかったときにはその事実をきちんと考察し、次に生かすことができます。
いっぽう、数字で考えることをしなかった場合は、ゴールがあいまいなため、うまくいかなかった場合は「がんばった」「できるだけのことをした」などと自分を甘やかしてしまいます。
これからあなたはリハビリ専門職としてのプロを目指すのですから、論理的思考力の最初のステップとして、数字で考え、示す習慣を身につける必要があると覚えておきましょう。
8.PCスキル
あなたはPCの操作に自信がありますか?
ここ数年、どの世界においても「新人のPCスキルが低い」と危惧されています。スマホやタブレットの普及が進み、日常生活でPCを開く必要がなくなっているからで、PCを持っていない、という若手職員さえいるのも事実です。
しかし仕事においては、PCは必須。電子カルテやリハマネジメントシステム、報告書や議事録、介助方法の指導書、そして研究発表など、PCが使えなければ無駄な時間がかかってしまうことばかりです。
- Word:書式設定や表・画像の挿入などを使って、わかりやすく整った文書を作成・編集できる程度
- Excel:図表やグラフの作成、関数計算、数値データの整理ができる程度
- PowerPoint:発表準備や資料作成~発表本番スライドの制作ができる程度
- ウェブブラウザ:検索、調査のために駆使できる程度。
- タイピング:正しいポジションでブラインドタッチができる程度。
私の印象では、ワード・エクセル・パワーポイントともに、タブとスペースの使い分けができず、機種が変わると体裁が崩れるようなファイルを作る若手もとても多いです。そして、そうした微妙なスキルで作られたデータは、非常に見にくく、相手の読む気を削ぐのです。
新人の時点で特別に秀でたスキルを持つ必要はありませんが、PCの使い方まで教えてもらえる職場は、医療従事者の世界では多くないと思っておきましょう。
大げさなことをしなくても、今はOfficeの使い方を教えてくれるサイトや書籍が充実しています。書籍は1冊くらい持っておいても損はありません。
基本操作はもちろん、「こんな時はどの機能を使えばいいの?」「こんなことできたらいいな」という疑問の解決・作業の効率化ができる人気の本はこちら。私も愛用しています。
パワーポイントで作るスライドについては、わかりやすいデザインの勉強も少しずつしておきましょう。色や吹き出しなどのオブジェクトを意味なく多用したスライドは、はっきり言って最悪です。私のおすすめはこちらです。
タイピングについては、これができるかできないかで、あなたの残業時間が変わるといっても過言ではありません。電子カルテが普及している現在、合間を縫ってすばやくタイピングできるスキルがあれば、それだけ仕事は効率化すると考えて。ブラインドタッチは最も大切な必須スキルと心得ましょう。
新人理学療法士が得する8大スキルの勉強 まとめ
この記事では、新人理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のあなたが勉強しておくと得をする8つのスキルについて述べました。
1.社会人としての意識
2.あいさつ、身だしなみ、話し方などのマナー
3.「組織人」としての仕事や業務の進め方
4.読む相手に配慮した、適切な文書を作る力
5.「報連相」を基本とする、仕事で必要なコミュニケーション力
6.「相手に伝わる」話し方
7.社会人としての考える力(論理的思考力)
8.PCスキル
もちろんこれを読んだだけではスキルは見につきませんし、時間をかけなければマスターできないものもあります。
自分は専門職だから、こんなことより専門のスキルや知識を…と思う気持ちはわかりますが、あなたはもう社会人。自分の仕事を通して、組織と社会に貢献することが求められているのです。
大切な仕事を任せられるようになるのは、こうしたことができる人。